「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天〜前編〜」の現代語訳(口語訳)

「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天(かかるほどに、宵うち過ぎて〜)」の前半部分の現代語訳になります。学校の授業の予習復習にご活用ください。

また、後編は「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天(天人の中に、持たせたる箱あり。)〜後編〜」の現代語訳(口語訳)になります。

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「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天(かかるほどに、宵うち過ぎて)〜前編〜」の現代語訳

 かかるほどに、宵うち過ぎて、子の時ばかりに、家のあたり、昼の明かさにも過ぎて、光りたり。
こうしているうちに、宵は過ぎて、子の時頃に、(竹取の翁の)家の付近が、昼の明るさにも増して、光っている。

望月もちづきの明かさを十とを合はせたるばかりにて、在る人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。
満月の明るさを十合わせたくらいで、そこにいる人の毛の穴まで見えるほどである。

大空より、人、雲に乗りて下り来て、土より五尺ばかり上がりたるほどに立ち連ねたり。
大空から、人が、雲に乗って下りて来て、地面から五尺くらい上がったあたりに立ち並んでいる。

内外うちとなる人の心ども、物におそはるるやうにて、あひ戦はむ心もなかりけり。
(これを見て)家の内外にいる人たちの心は、得体の知れないものに取りつかれたようになって、立ち向かって戦おうとする気持ちもなかった。

からうじて、思ひ起こして、弓矢を取り立てむとすれども、手に力もなくなりて、萎えかかりたる中に、心さかしき者、念じて射むとすれども、ほかざまへ行きければ、あひも戦はで、心地ただ痴れに痴れて、まもりあへり。
やっとのことで、心を奮い立たせて、弓矢を取って構えようとするけれども、手に力もなくなって、ぐったりとして何かに寄りかかっている(兵士たちが多い)中で、気丈な者は、こらえて(天人に)矢を射ようとするが、(矢は狙いを外れて)よその方へ飛んでいったので、対抗しても戦うこともしないで、気持ちがただもうぼうっとして、見守ることしかできなかった。

 立てる人どもは、装束さうぞくの清らなること物にも似ず。
(人々の前に)立っている天人たちは、衣装が華麗であることは他に比べようがない。

飛ぶ車一つ具したり。
(空を)飛ぶ車を一台伴っている。

羅蓋らがいさしたり。
(その車には)羅蓋がさしかけてある。

その中に、王とおぼしき人、家に、「みやつこまろ、まうで来。」と言ふに、猛たけく思ひつるみやつこまろも、物に酔ひたる心地して、うつぶしに伏せり。
その(車の)中に、(天人たちの)王と思われる人が(いて)、(竹取の翁の)家に(向かって)、「みやつこまろ、出て参れ。」と言うと、(迎えに来た天人をやっつけてやると)勇ましく思っていたみやつこまろも、何かに酔ったような気分になって、うつぶせに倒れ伏してしまった。

 言はく、「なむぢ、幼き人。いささかなる功徳を、翁おきな作りけるによりて、なむぢが助けにとて、片時のほどとて下ししを、そこらの年ごろ、そこらの黄金賜たまひて、身を変へたるがごとなりにたり。かぐや姫は罪を作り給たまへりければ、かくいやしきおのれがもとに、しばしおはしつるなり。罪の限り果てぬれば、かく迎ふるを、翁は泣き嘆く。あたはぬことなり。はや返し奉れ。」と言ふ。
(天人の王と思われる人が)言うことには、「おまえ、心幼い者よ。わずかな善行を、翁がなしたことによって、おまえの助けにしようとして、ちょっとの間ということで(かぐや姫を地上に)下したのに、多くの年月の間に、たくさんの黄金をお与えになって、(おまえは)生まれ変わったように(裕福な身に)なってしまっている。かぐや姫は(天上で)罪を犯しなさったので、このように身分の低いおまえのもとに、少しの間いらっしゃったのである。罪を償う期間が終わったので、こうして迎えるのを、翁は泣いて嘆く。(かぐや姫を引き止めようとしてもそれは)できないことだ。早く(かぐや姫を)お返し申し上げよ。」と言う。

 翁答へて申す、「かぐや姫を養ひ奉ること二十余年になりぬ。片時とのたまふに、あやしくなり侍はべりぬ。また異所ことどころにかぐや姫と申す人ぞおはしますらむ。」と言ふ。
翁が答えて申し上げる、「(私が)かぐや姫をお育て申し上げることは二十余年になりました。(それをあなたは)ちょっとの間とおっしゃるので、疑わしくなりました。また違う場所にかぐや姫と申し上げる方がいらっしゃるのでしょう。」と言う。

「ここにおはするかぐや姫は、重き病をし給へば、え出でおはしますまじ。」と申せば、その返り事はなくて、屋の上に飛ぶ車を寄せて、「いざ、かぐや姫、きたなき所に、いかでか久しくおはせむ。」と言ふ。
(さらに)「ここにいらっしゃるかぐや姫は、重い病気を患っていらっしゃるので、(外に)出ていらっしゃることはできそうもありません。」と(翁が)申し上げると、それに対する(天人の)返事はなくて、屋根の上に飛ぶ車を寄せて、「さあ、かぐや姫、(こんな)穢れた人間界に、どうして長い間いらっしゃることがあるでしょうか。(早くお帰りください。)」と言う。

 立て籠めたる所の戸、すなはちただ開きに開きぬ。
(すると、かぐや姫を)閉じ込めておいた所の戸は、すぐにただひたすらに開いてしまった。

格子どもも、人はなくして開きぬ。
格子なども、(開ける)人はいないのに開いた。

おうな抱きてゐたるかぐや姫、外に出でぬ。
嫗が抱いて座っていたかぐや姫は、外に出てしまった。

えとどむまじければ、たださし仰ぎて泣きをり。
(嫗は姫を)引き止めることができそうもないので、ただ(かぐや姫を)見上げて泣いている。

脚注

  • 羅蓋 薄絹を張った柄の長い傘。貴人の頭上にさす。
  • 功徳 仏教で、よい報いが受けられるようなよい行いをいう。
  • 頭中将 蔵人頭くろうどのとうで、近衛このえ中将を兼任している者。
出典

竹取物語

参考

「国語総合(古典編)」東京書籍
「教科書ガイド国語総合(古典編)東京書籍版」あすとろ出版

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