「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天〜後編〜」の現代語訳(口語訳)

「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天(天人の中に、持たせたる箱あり。)」の後半部分の現代語訳になります。学校の授業の予習復習にご活用ください。

また、前編は「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天(かかるほどに、宵うち過ぎて)〜前編〜」の現代語訳(口語訳)になります。

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「竹取物語:天の羽衣・かぐや姫の昇天(天人の中に、持たせたる箱あり。)〜後編〜」の現代語訳

もはや誰もかぐや姫をとどめることはできない。泣き伏す翁を見て、姫も泣きながら手紙を書く。 「脱ぎ置く衣を私の身代わりと思ってご覧ください。あなた方を思うと、空から落ちてしまいそうな気がします。」と。

 天人の中に、持たせたる箱あり。
天人の中(のある者)に、持たせている箱がある。

天の羽衣入れり。
(その中に)天の羽衣が入っている。

またあるは、不死の薬入れり。
もう一つの箱には、不死の薬が入っている。

一人の天人言ふ、「壺つぼなる御おほん薬奉れ。きたなき所の物聞こし召したれば、御心地悪しからむものぞ。」とて、持て寄りたれば、いささかなめ給ひて、少し、形見とて、脱ぎ置く衣きぬに包まむとすれば、在る天人包ませず。
一人の天人が言う、「壺にあるお薬を召し上がれ。穢れた人間界の食べ物を召し上がったので、ご気分が悪いことでしょうよ。」と言って、(壺を)持ってそばに寄ってきたので、(かぐや姫は)ほんのちょっとおなめになって、少し、形見として、脱いで置いておく着物に包もうとすると、その場にいる天人が包ませない。

御衣ぎょいを取り出でて着せむとす。
(天人が)お着物(=天の羽衣)を取り出して(かぐや姫に)着せようとする。

 その時に、かぐや姫、「しばし待て。」と言ふ。
その時、かぐや姫が、「ちょっと待ちなさい。」と言う。

「衣着せつる人は、心異ことになるなりといふ。もの一言、言ひ置くべきことありけり。」と言ひて、文書く。
「天の羽衣を着せられた人は、心が人間世界の人と違ってしまうといいます。(心が変わらないうちに)一言、言い残しておかなければならないことがあったのですよ。」と言って、手紙を書く。

天人、「遅し。」と心もとながり給ふ。
天人は、「遅くなる。」と待ち遠しがり(せき立て)なさる。

かぐや姫、「もの知らぬこと、なのたまひそ。」とて、いみじく静かに、朝廷おほやけに御文奉り給ふ。
かぐや姫は、「ものの道理を解さないことを、おっしゃいますな。」と言って、たいそう静かに、帝にお手紙を差し上げなさる。

あわてぬさまなり。
(いかにも)落ち着いた様子である。

 「かくあまたの人を賜ひて、とどめさせ給へど、許さぬ迎へまうで来て、取り率てまかりぬれば、口惜しく悲しきこと。宮仕へ仕つかうまつらずなりぬるも、かくわづらはしき身にて侍れば。心得ず思おぼし召されつらめども。心強く承らずなりにしこと、なめげなる者に思し召しとどめられぬるなむ、心にとまり侍りぬる。」とて、
「このように大勢の人をお遣わしくださって、(月の都に帰る私を)お引きとめなさいますけれども、(どうしてもとどまることを)許さない迎えがやって参りまして、私をつかまえて(月の都へ)行ってしまいますので、残念で悲しいこと(でございます)よ。(とうとう)宮仕えをいたしませぬままになってしまったのも、このように複雑な事情のある身の上でございますので。納得できないとお思いになっておられるでしょうが。(宮仕えを)強情にお受けせずに終わってしまいましたことを、無礼な者だとお心にとどめられてしまいましたことが、心残りになっております。」と書いて、

  今はとて天の羽衣着る折ぞ君をあはれと思ひ出でける
今はもうお別れだと、いよいよ天の羽衣を着る時になって、(今更のように)あなた様のことをしみじみと懐かしく思い出すことでございます。

とて、壺の薬添へて、頭中将とうのちゆうじやう呼び寄せて、奉らす。
と詠んで、壺の中の(不死の)薬を添えて、頭中将を呼び寄せて、(帝に)献上させる。

中将に、天人取りて伝ふ。
中将には、天人が(かぐや姫から)受け取って手渡す。

中将取りつれば、ふと天の羽衣うち着せ奉りつれば、翁を、いとほし、かなしと思しつることも失せぬ。
中将が受け取ったので、(天人が)さっと天の羽衣をお着せ申し上げたところ、(姫は)翁を、ふびんだ、いとしいとお思いになっていたことも消え失せてしまった。

この衣着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、昇りぬ。
この羽衣を着た人(=かぐや姫)は、人間世界の一切の悩みがなくなってしまったので、(今はすっかり天人の心になりきって、空を飛ぶ)車に乗って、百人ばかりの天人を引き連れて、天に昇ってしまった。

その後、翁夫妻は悲嘆のあまり病の床についた。
一方、姫が昇天したことを聞いた帝の嘆きも深く、不死の薬に手紙を付け、それを天に近い山の頂で燃やすよう命じた。
命を受けた使者は、駿河するが国にある山へ多くの兵士を連れて登った。
このことから、その山を富士山さんと名付けたのである。
そして、焼いた煙は、今も雲の中へ立ち上っているという。

出典

竹取物語

参考

「国語総合(古典編)」東京書籍
「教科書ガイド国語総合(古典編)東京書籍版」あすとろ出版

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