「井筒:夢の中の舞(後場)」の現代語訳(口語訳)

「井筒:夢の中の舞(後場) 」の現代語訳になります。学校の授業の予習復習にご活用ください。

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「井筒:夢の中の舞(後場) 」の現代語訳

旅の僧は、里の男に改めて業平と有常の娘の話を聞き、その夜は在原寺で旅寝をする。その夢に再び女が現れる。女は業平の形見の装束を身に着けている。

シテ:あだなりと名にこそ立てれ桜花、年に稀まれなる人も待ちけり。かやうに詠みしも我なれば、人待つ女とも言はれしなり。我筒井筒の昔より、真弓まゆみ槻弓つきゆみ年を経て、今は亡き世に業平の、形見の直衣なほし身に触れて、恥づかしや、昔男に移り舞、
シテ:桜はすぐに散るので頼み難いものとして名高いけれど、一年のうちめったに来ないあなたのことだって待っていますよ。このように詠んだのも私なので、人を待つ女とも言われたのです。私は筒井筒の昔から、真弓槻弓年を経てではないけれど、(長い間親しんだ、)今は世を去った業平の、形見の直衣を身に着けて、恥ずかしいことながら、昔男の業平にのり移って舞を舞う、

地謡:雪をめぐらす花の袖。
地謡:風が雪を吹き回す、その美しく軽やかな舞い姿。

シテ:ここに来て、昔ぞ返す在原の、
シテ:ここに来て、(業平の生きていた)昔に返ったような在原の、

地謡:寺井に澄める月ぞさやけき、月ぞさやけき。
地謡:寺の井戸に映る、澄んだ月はさやかだ、月がさやかに澄んでいる。

シテ:月やあらぬ春や昔と詠ながめしも、いつの頃ぞや、筒井筒。
シテ:月やあらぬ、春や昔と(業平が)詠んだのも、いつの頃だっただろうか、筒井筒。

地謡:筒井筒、井筒にかけし、
地謡:筒井筒、井筒で高さを測った、

シテ:まろが丈、
シテ:私の背丈も、

地謡:生ひにけらしな。
地謡:成長したことだろう。

シテ:老いにけるぞや。
シテ:(ではなく)老いこんでしまったことだよ。

地謡:さながら見見みみえし、昔男の冠かぶり直衣は、女とも見えず、男なりけり、業平の面影。
地謡:まるで、あい会った時そのままに、昔男の冠直衣をつけた(女の)姿は、女とも見えないで、男の姿であることよ、業平の面影を。

シテ:見れば懐かしや。
シテ:見ると懐かしいことだよ。

地謡:我ながら懐かしや。亡夫魄霊ばうふはくれいの姿は、しぼめる花の色なうて、にほひ残りて在原の、寺の鐘もほのぼのと、明くれば古寺の、松風や芭蕉葉ばせうばの、夢も破れて覚めにけり。夢は破れ明けにけり。
地謡:私の姿であるのに懐かしいことだよ。亡き夫、業平の姿をした女の幽霊の姿は、しぼんでしまった花のように色が失せても、匂いだけは残っていたが、在原寺の(明け方の)鐘が鳴り、ほのぼのと明けると古寺の、松風に芭蕉の葉が(破れるように)はかなくも夢も破れて覚めてしまったことだ。夢は破れ、夜は明けてしまったことだ。

出典

井筒

参考

「国語総合(古典編)」三省堂
「教科書ガイド国語総合(古典編)三省堂版」文研出版

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